「冬の台風」こと「爆弾低気圧」とは何?台風との違いや予測は可能か調査しました

「爆弾低気圧」と言われる言葉を耳にしたことはないでしょうか?

「冬の台風」とも言われる「爆弾低気圧」について詳しく調査しました!

 
 



「冬の台風」こと「爆弾低気圧」とは?

急速に発達した低気圧は、俗に「爆弾低気圧」とも呼ばれ、冬に発生することが多いことから「冬の台風」とも言われています。
気象庁では「爆弾」のイメージが不適切という理由から「爆弾低気圧」は正式な名称ではありませんが、もともとは世界的に“急速に発達する低気圧”のことを「Bomb cyclone」と呼んでいたことから、直訳で「爆弾低気圧」と呼ばれるようになりました。
気象庁では中心の気圧が24時間で24ヘクトパスカル以上下がった時に「爆弾低気圧」と呼ばれます。
「爆弾低気圧」は気圧の値からしても台風と同じくらいの威力があります。
 
 

「爆弾低気圧」と「台風」との違いは?

 
 
「爆弾低気圧」の特徴

・発生時期:冬
・発達:陸上でも海でも発達
・定義:中心の気圧が24時間で24ヘクトパスカル以上下がった時。
・予測:予測が難しい。

 
 
「台風」の特徴

・発生時期:夏(8~9月)
・発達:熱帯の海上
・定義:最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s以上のもの。
・予測:比較的予測しやすい。

 
 


 
 
「爆弾低気圧」と「台風」は発生する季節や場所に違いがあります。
 

「台風」とは、熱帯の海上で発生する低気圧「熱帯低気圧」の中でも、低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s(34ノット、風力8)を超えたものを指します。日本の南の海上で発達したものが数日かけて日本に近づいて来るので、比較的予測しやすい低気圧です。主に、夏(8~9月)を中心に発生。中心ほど強風が発生します。

 
爆弾低気圧は、日本付近に近づいてから1日程度で急速に発達するため、発生タイミングが非常に読みにくいという特徴があります。
進路を予測しやすい台風と異なり、予測が難しい爆弾低気圧は、数時間で急速に発達する可能性があり、暴風雨の範囲が巨大化しやすく、強風・豪雨の範囲が列島全体に及ぶこともあり、台風のように中心からの円で暴風域を示す表現は難しくなります。
 
 

「爆弾低気圧」の予測は可能か?

 
「爆弾低気圧」の予測は可能か?調べてみました。

2014年にLDR(Local Deepening Rateの略、日本語で言えば局所発達率)という指標が考案されました。

結論を言うと、近年、爆弾低気圧の予測精度は上がってきていて、5日前に実際の発達を90%以上を予測できた実績もあるが、予測精度にはまだ改良の余地があると言うことです。
詳しく知りたい方は、以下の爆弾低気圧情報データベースをご参照下さい。

また、発生の2日前より予測する、ストームレーダーというサイトがございます。
Twitterを登録しておくと、ストーム・爆弾低気圧の情報を発生段階からいち早く入手できます。
ストーム・爆弾低気圧情報
@LBW_storm

以下、爆弾低気圧情報データベースより抜粋
爆弾低気圧はどのくらい前から予測できるのか?参照

爆弾低気圧の水平的な広がりを表現できる新たな指標LDR(Local Deepening Rateの略、日本語で言えば局所発達率)を考案しました(Kuwano-Yoshida 2014)。この指標では従来の低気圧の中心気圧ではなく、各地点での地表気圧の時間変化率を用いていますので、爆弾低気圧の発達に伴う気圧低下の水平分布を表現できます。
この指標を用いて、爆弾低気圧がどのくらい前から予測できているのかを調べています。現在、日本の気象庁など世界各国の気象機関ではスーパーコンピュータで9日から2週間先までの予測計算を行っています。この予測計算は各機関一つではなく、それぞれ数十通りの計算をしています。これをアンサンブル予報といいます。これは大気には計算開始の現在の状態(初期値)に含まれる微小な誤差によってその後の予測が大きく変わってしまうという性質があり、一つだけの予測では外れる確率が高いからです。初期値を少しずつ違えた計算をすることで予測の的中率を上げるのです。競馬の単勝と複勝の違いに似ています。たくさんの予報結果で多数決をすれば、より起こりそうな天候を確率として表現することもできます。ただし、必ずしも本命が実現するわけではなく、大穴の天候になることもままあります。この「本命がどの程度当たるのか」ということが「予測可能性」です。

この予測可能性の研究のために構築されたTIGGEというデータベースがあります。これは2006年から世界各国の気象機関で計算されたアンサンブル予報結果をまとめたもので、ここのデータを使って爆弾低気圧がどのくらい前からどの程度の確率で予測できているのかということを検証できます。例えば先ほどの根室沖の爆弾低気圧がどのくらい前から予測できていたのかを見てみましょう。日本の気象庁のアンサンブル予報は5日前の時点でこの低気圧が急発達することを90%以上の確率で予測していました(図2b)。また、現在世界一の予報精度を持つヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)に至っては1週間前から90%以上の確率で予測していました(図2d)。元々、1980年代に爆弾低気圧の研究が始まったのはその予測が24時間前でも難しかったことがきっかけでしたが、30年経って1週間前にほぼ予測できるようになるまで気象学は進歩しているのです。しかし、全ての爆弾低気圧が1週間前から予測できるわけではありません。2013年1月14日に日本南岸を通過しながら発達し、関東に大雪をもたらした爆弾低気圧に関しては、ECMWFでも90%以上の確率で予測できたのは4日前からでした(図3)。

このような予測可能性の違いがどうしてもたらされるのでしょうか。その要因の一つは海上での観測データの不足です。海上には地上で行われている気球を用いた高層気象観測点がほとんどないため、予測の初期値誤差が大きいのです。この誤差がその後の低気圧の発達予測に影響します。この影響を調べるため2009年1~2月に北太平洋上で航空機を用いた特別観測Winter T-PARC 2009が行われました。このときの観測で得られたデータを取り入れた初期値と取り除いた初期値でアンサンブル予測を行うと、その後の爆弾低気圧の予測精度が大きく変わりました。特別観測を取りいれた予測では5日前に実際の発達を90%以上で予測できましたが、取り除いた予測では急発達の確率が高い場所が北東側にずれてしまいました(図4)。今後は、より多くの爆弾低気圧事例の予測精度について解析を行い、どのくらい前から爆弾低気圧を予測でき、どのような場合に予測可能性が高いのかを明らかにしていきたいと思っています。

 
 
 

まとめ

2019年の台風19号など、甚大な被害をもたらした災害も記憶に新しい方もおられると思います。
冬の台風と呼ばれる爆弾低気圧は、その名前以上に警戒すべき災害だと認識しました。